暮らしに寄り添う「小上がり和室」の魅力

リビングに生まれる立体的な心地よさ

柔らかな日差しが差し込むリビングの一角に、少しだけ段差を設けた小さな和室がある暮らし。お洗濯物を畳んだり、少し横になって読書を楽しんだり、お気に入りのクッションに身を委ねてお茶を愉しんだり。そんな日々の何気ないシーンにそっと寄り添ってくれるのが、小上がり和室の魅力です。

フローリングの床から一段高くなることで、空間に心地いい立体感が生まれます。完全に壁で仕切られているわけではないのに、リビングとは少し違う場所として認識できるため、「家族と同じ空間にいながら、少しだけ自分の時間を過ごしたい」というときにも便利です。

例えば、リビングで家族がテレビを見ている横で、小上がりでは子どもがお昼寝をしている。あるいは、ソファに座るほどではないけれど、床に直接座るより少し落ち着きたいときに腰を掛ける。畳の上でストレッチをしたり、洗濯物を畳んだりすることもできます。

こうした「何をするための部屋」と限定されない曖昧さこそ、小上がり和室の面白さかもしれません。

また、段差によって視線の高さが少し変わることで、同じリビングの中でも景色に変化が生まれます。壁や建具を増やさなくても空間をゆるやかに分けられるため、開放感を保ちながらゾーニングしたい場合にも取り入れやすいアイデアです。

モダンなインテリアの中に畳の素材感を取り入れることで、無機質になりすぎず、どこか落ち着きのある雰囲気に仕上げられるのも魅力。畳の色や縁の有無、壁や天井の素材までこだわれば、昔ながらの和室とは違う、現代の暮らしに馴染む和の空間をつくることができます。

家族みんながマルチに使える特等席

小上がり和室の最大のメリットは、その多用途さにあります。

段差の部分に腰を掛ければ、ソファのようにも使えます。リビングのソファがいっぱいでも、ちょっと腰掛けて家族と話す場所として使えるでしょう。キッチンからも様子が見える位置に配置すれば、料理をしながら子どもの遊ぶ姿を確認することもできます。

小さなお子様がいる家庭なら、お昼寝スペースとしても便利です。リビングのすぐ横にあることで、家事をしながら様子を見守りやすく、わざわざ別室まで寝かせに行く必要もありません。

おもちゃを広げて遊ぶ場所として使う場合も、畳の上なら床に座って遊びやすく、遊び終わったらそのまま片付けるという習慣をつくりやすくなります。

さらに、子どもが成長してからも使い道は変わります。

小学生になれば宿題をする場所にしたり、本を読む場所にしたり。家族が集まるリビングの一角だからこそ、完全に個室へこもるほどではない「ちょっとした居場所」として活躍します。

大人にとっても、昼間は洗濯物を畳む場所、夜は晩酌を楽しむ場所というように、そのときどきで役割を変えられます。

そして、忘れてはいけないのが段差部分の活用です。

小上がりの下を引き出し収納にすれば、ブランケットや座布団、おもちゃ、季節の小物など、リビング周辺で使うものを収納できます。収納場所が近くにあることで、「使ったものをすぐ戻す」という動作もスムーズになります。

ただし、収納をたくさん作ればよいというわけではありません。引き出しを開けるためのスペースが必要になるため、ソファやテーブルとの距離が近すぎると、せっかくの収納が使いにくくなることもあります。

小上がりをつくるなら、畳の面積だけでなく「その下をどう使うのか」まで含めて考えておくことが大切です。

後悔しないための段差と配置のバランス

魅力たっぷりの小上がり和室ですが、設計のバランスを間違えると「意外と使いにくかった」という失敗につながることもあります。

特に重要なのが、段差の高さです。

段差が低すぎると、床面と小上がりの境目が分かりにくく、歩くときに足を引っかける原因になることがあります。一方で、高くしすぎれば上り下りが大変になり、将来的に使いにくさを感じる可能性もあります。

一般的には30〜40cm程度の高さが採用されるケースがありますが、これは「誰が使うのか」「収納を設けるのか」「腰掛けとして使うのか」によっても適した寸法が変わります。

例えば、腰掛けとして頻繁に使いたいなら、座ったときの高さやリビング側からの立ち上がりやすさも確認したいところです。

小さなお子様がいる家庭では、段差から転落したり、上り下りの際に足を踏み外したりしないよう、安全性についても考えておきたいものです。将来的に高齢の家族と暮らす可能性がある場合も、段差があること自体を慎重に検討する必要があります。

もうひとつ大切なのが配置です。

小上がり和室は、リビングの隅に置けばいいというものではありません。

例えば、玄関からリビングへ向かう通路の途中に大きく張り出していたり、キッチンからダイニングへ移動するルートを横切るように配置したりすると、毎日の何気ない移動で段差を意識することになります。

図面の上では数十cmの違いでも、実際の生活では毎日何度も通る場所になるかもしれません。

朝、キッチンから洗面室へ向かう。子どもがリビングから玄関へ走っていく。掃除機を持って部屋を行き来する。買い物袋を両手に持って帰宅する。

こうした場面を一つひとつ想像してみると、「ここに段差があっても大丈夫か?」が見えやすくなります。

小上がりとリビングの「つながり方」も大切

小上がり和室を考えるときは、畳のスペースそのものだけでなく、リビングとのつながり方にも注目してみてください。

完全にオープンにすれば、リビングの一部として使いやすくなります。反対に、建具を設ければ来客時に生活感を隠したり、昼寝中の子どもを少し静かな環境にしたりすることもできます。

例えば普段は建具を開けて一体的に使い、来客時や集中したいときだけ閉めるという使い方です。

この「開けても閉めても使える」という考え方は、家族構成や生活スタイルが変わっていく注文住宅では特に重要です。

小さな子どもがいる時期にはオープンなキッズスペースとして使い、子どもが成長したら読書や趣味のスペースにする。さらに将来的には、家族が集まるリビングの一角として使う。

最初から用途を一つに決めすぎないことで、長く使いやすい空間になっていきます。

「何となくお洒落」だけで決めない

小上がり和室は写真で見ると、とても魅力的に感じる空間です。

畳とフローリングの組み合わせや、段差を利用した間接照明、低い家具などを組み合わせると、モデルハウスのような印象的なリビングになります。

ただ、家づくりでは「見た目が素敵だから」という理由だけで採用すると、暮らし始めてから使い方に迷ってしまうことがあります。

大切なのは、「我が家では、いつ、誰が、何をする場所なのか」を具体的に考えること。

休日にゴロゴロする場所なのか。子どもの遊び場なのか。洗濯物を畳む場所なのか。来客時に使う場所なのか。それとも、家族がリビングに集まりながら、それぞれ好きなことをするための場所なのか。

目的が見えてくると、必要な広さや段差の高さ、収納の有無、建具の必要性も自然と決まってきます。

そして、できれば図面だけで判断せず、実際の住まいで確認してみることをおすすめします。

実際の住まいでどのように和室が活かされているかをたくさんの実例から学ぶことで、「この高さなら座りやすそう」「この位置なら家族の動線を邪魔しない」「このくらいの広さなら十分使えそう」といった、図面だけでは分かりにくい感覚をつかむことができます。

家族のこれからを考えた小上がり和室に

小上がり和室の魅力は、単に畳のスペースが増えることではありません。

リビングの中に少しだけ高さの違う場所があることで、同じ空間にいながら、それぞれが違う過ごし方を楽しめることにあります。

家族が一緒にテレビを見る日もあれば、子どもは畳で遊び、親はキッチンで家事をする日もある。誰かがお昼寝をしている横で、別の家族が静かに過ごすこともあるでしょう。

そんな「同じ家にいながら、それぞれの時間を過ごす」という暮らしを支えてくれるのが、小上がりという存在なのだと思います。

一方で、段差があるからこそ、安全性や動線、将来の使いやすさまで考える必要があります。

今の暮らしだけではなく、子どもが成長した10年後、20年後にも使いやすいのか。収納として使うなら、引き出しを本当に開け閉めしやすいのか。掃除をするときに邪魔にならないか。

こうした細かな部分まで想像しておくと、見た目だけではない「暮らしやすい小上がり和室」に近づいていきます。

デザイン性と実用性を兼ね備えた小上がり和室は、家族のライフステージに合わせて優しく形を変え、暮らしを豊かに彩ってくれます。

フラットなリビングとはひと味違う、心地いい高低差がもたらすお気に入りの空間を、ぜひあなたの家づくりにも取り入れてみませんか。